大塚敬節先生の自署の「傷寒論」となります。
すべて漢文です。学生時代に漢文をしっかり勉強しておけば…とか思います。
開業10年目で漢方の歴史を話すのは?どうかな?とも思いますが
コロナ渦の現状で…日本には優れた医学を持っていることを知って頂きたいと思います。
そんな日本に漢方医学が残った理由を、記述しておきたいと思いました。
何故、ここまで私が漢方にのめり込むのかは分かりませんが…病気を本当に把握しているのは
現代医学ではなく漢方医学の方が上の様に思われてならないからかも知れません。
江戸時代…医療は漢方や鍼、あんまなどが主流でした。
漢方医学は傷寒論を基盤とした医学を展開していました。
江戸時代が終わり、時は明治に変わります。
この時には、近い将来、医師の国家試験が必要になってくることになります。
漢方医学が役立つか?を決めるために「脚気」を題材に西洋医学と勝負をすることになります。
今では脚気の原因はビタミン不足と分かっていますが、その頃は原因が不明でした。
このことから…漢方医学と西洋医学を勝負をさせた訳です。
圧倒的勝利を得たのは漢方医学でした。ところが「秘伝と称して薬草の内容を言わない人」が続出。これにより…明治政府は西洋医学の透明性を信じ、漢方医学を捨てることになりました。
これから先は、漢方を振り返り見る人がいない時代に入って行きました。
富国強兵で、戦時医学である傷を治す医学の方が優先されたこともあるのでしょう。
日本漢方に関して大切な本を紹介したいと思います。
最初は、和田啓十郎先生が書かれた「医界之鐵椎」です。この本の初版は和田先生の自費出版です。この本がなければ日本の漢方医学は消滅してかも知れません。
医界之鐵椎日本の江戸時代では主流であった漢方医学がなくなり、漢方医学の優位性を認めることが次世代の医学に繋がるとの思いで書かれた本だと思います。
実に、この一冊の本が今の保険漢方の発展に繋がっていることになり貴重な本です。一人の医師が考え、自費を費やし残した本によって今の保険適用での漢方医療があるということです。その意味では、この本の存在意義は大きく、現代漢方の基礎を作った本に他なりません。
一人の力は小さく見えるかも知れない。でも…この一冊の本が日本に漢方を復興していくことになります。実は1人1人の力は小さくはないのです。
この本に出会い感動した医師が湯本求真先生でした。
自分の医学信じ…最愛の娘さんを亡くしてしまい。精神的に困窮していた時に出会った本です。湯本先生は漢方医学を学び直します。患者が来ようと来まいと自分の研究を進めて行きました。その結果、出版されたのが「皇漢医学」でした。
皇漢医学この本は傷寒論を基盤にして書かれてあります。傷寒論をより良く理解出来る様な構成になっており、薬徴(薬草の性格)を重視して、次世代の漢方医学へ向かっている本です。この本は神保町の古本屋で買っておいた本です。
湯本先生の求める物は本当に力のある医学でした。ですから…開業はしていましたが患者数などには何の意味も感じずに臨床と研究をして行った先生です。
娘さんを亡くしたことへの抵抗と強い医学を求める心が…この本を作り上げている様にも感じます。医師として全力で生きた先生の姿だったのでは?と思われてなりません。
この本を読んで感動した先生が大塚敬節先生です。大塚先生も娘さんを亡くしています。訪問診療中に、娘さんの死を知った先生です。高知で繁盛していた医院を閉めて、湯本先生の弟子になるべく東京へ向かいます。
傷寒論解説湯本先生も古方派でしたので、大塚敬節先生もまずは古方基盤としました。30年以上前の傷寒論解説も持っていますが、クリニックに置いてあるため自宅用に新しい本を購入して置きました。
大塚敬節先生の特技は…文章を書くのが好きだったことから漢文の説明は天下一品です。この本があれば、傷寒論の基本姿勢が分かると思われます。非常に難解な本を口語訳としており、大塚敬節先生らしいな…と感じる様な本です。
傷寒論を学びたいのならば…まず、この本をお読みになって下さい。最初は全く分かりませんが年月を追う毎に、霧が晴れていく様に傷寒論医学が実感できる本です
大塚敬節先生は他の人とお付き合いするのが上手な先生だったのでは?と思います。
後世法の矢数先生とも交わり、漢方医学を大きな学問にしていく努力を惜しみませんでした。
漢方処方解説この本は矢数道明先生の「漢方処方解説」です。この本は古方(傷寒論系)と、それ以後に作られた「後世法」といわれる漢方薬を網羅して説明しています。
古方は単純な処方構成ですですので、急激な症状に対して有効な処方が多いのですが、後世法は薬草の種類が多い処方が多いため体質改善に主眼を置いている処方の様に捉えることが出来ます。
この写真、そのもので、どれだけ読んだのか分かりません。それほど多くの症例に可能であった本です。基本は傷寒論なのかも知れませんが、この様な後世法を入れた本の解説も臨床では有意義な本として、ボロボロになるまで使わせて頂きました。
矢数先生の親族には「矢数格先生」がいらして…「一貫堂医学」を作っています。
防風通聖散・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯・通導散などの処方は現代日本の漢方医学の一翼を担っています。これらの処方は基本的に後世法の処方になります。
漢方一貫堂医学一貫堂医学では臨床で使える処方が多いというのが実感です。
矢数先生は、解毒症・臓毒症・駆血症に分けて治療をしていた様なのですが、解毒症の柴胡清肝湯や荊芥連翹湯、また臓毒症の防風通聖散は多く使われます。通導散に関しては私の理解が弱いためか?傷寒論での駆血剤を使うことが多いのが実情です。
ただ、ここまで病気分類を簡便化して漢方薬を使うことの重要性を示して下った医師は少ないと思われます。漢方薬は一つの薬草が入ってなければ効かないということはありません。全体的に身体に合っていることが大切ですので…その意味において患者さんの病態を何種類かに分けて漢方薬を使う意義の重要性を示していると思います。
普通には書かないような記事でしたが、こんな記事も良いのかな?と思い書いてみました。
上記で説明した医師の本が今の日本の保険適用漢方を背負っているという姿です。
実は、自分には…この様な記事を書いている自分自身が分からない部分があります。でも、それが自分の生きていく道だったのか?自問自答する自分がいるだけです。自分の生きてきた道で知ったことをブログ記事にしているのですが…こんなに漢方医学に興味を持っていたのかな?と思ったりします。下の写真は大塚敬節先生が書いて下さったサイン入りの漢方書で、どう言う訳か?漢方に近しかったのでしょうかねぇ…??? それならば…今回の人生は漢方医学への本当の姿への理解と現代医学への融合を目指して歩んで行きたいと思います。